"達成感 高校3年生の「じゃじゃ馬馴らし」"をもう一度
<5部>
発表後気持ちも落ち着いて教室に戻る途中、国語の○○先生に「脚本がよかったな」と声を掛けられた。そんなことを評価されるとは思ってもみなかった。びっくりしながら教室に着いて、さらに驚く光景を目の当たりにした。
さっきまで喜びで大騒ぎしていた男子が今度は号泣していた。『こんなことが』と心の中で信じられない気持ちだった。彼らの心にストレートに響く出来事だったのだろう。私にとっても今のところこれが最初で最後の体験である。今でも衝撃的な場面として私の心の奥に残っている。
その後クラスではその余韻が醒めず打ち上げをしようということになり、皆で集まり盛り上がったのだと思う。でも、私はそれに行かなかった。今までのことが幻かのごとくもとの生活にきっぱり戻った。受験のことが不安になったのか、それもあるだろう。それ以上にそうしないと自分がこのまま自分の中に潜む情熱をおしとどめることが出来なくなるような気がした。
<6部>
もとの生活に戻って、文化祭前よりさらに信じられないくらい沈黙した日々を過ごした。学校でも自宅でもずっと机に向かっていたと思う。自然と騒然としていたクラスも受験に向かって平静を保つようになった。
でも、以前と違うのは、個別にやっているようでも、皆の中でつながるものを感じながらやっている気がしていたことだろうか。きっぱり受験体制に戻ってもやはり必要な知識は全くたりなかった。希望の国立の1次は受かったが、2次は無理と判断し、1年間は浪人を覚悟し、一からやり直すつもりだった。が、悩んだあげく、2次と同日に試験があった1つの私立の試験を受けた。なぜか受かった。クラスの女子が作ってくれたお守り(応援の言葉が書かれていた紙)はずっと懐に入れて臨んだ受験。受験日は高校の卒業式だったが、担任の先生から後で、皆が応援していたと聞いた。・・・
今、私はここで働いている。あの時、受ける選択をしなくては今の私はない。
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