私が父の姿を最後に見たのは、
父が亡くなってから5ヶ月ほど経った頃だっただろうか。
生前、医師であった父が
おそらく自分の最も愛する場所であった
診察室の白い椅子に
白衣を着た姿で深く腰掛けて
見たこともないような満面の笑みを浮かべていた。
父の後ろにはやはり満面の笑みを浮かべた2人の女性
2人とも白衣を着ていた。
看護婦さんだと思ったが、
同時に、最後に父と一緒に働いていた看護婦さんではないことはすぐにわかった。
誰だか思い出せないまま
父と2人の看護婦さんの姿は
徐々に空の方に遠ざかっていった。
私は
ああ、行くんだね。お父さんは・・・
そこは天国なんだね。
と漠然と思った。
亡くなる直前のあの苦しそうな父の姿を思い出しながら
本当によかったと心から思ったのを記憶している。
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