大海(おおうみ)の
磯もとどろに
よする浪
われてくだけて
裂けて散るかも
私の好きな歌の一つである。
源 実朝が詠んだ歌で、金槐和歌集に収められている。
実朝は鎌倉幕府の第三代将軍となったが、右大臣拝賀のため鶴岡八幡宮に参詣した折に、若干28歳で甥の公暁に暗殺された。
征夷大将軍、源 頼朝の次男であり、母はあの北条政子である。
8歳の時に父を失い、家督を継いだ兄頼家は、後に北条氏に実権を奪われ、北条氏打倒を企てて失敗、伊豆に幽閉され、祖父である北条時政の刺客によって惨殺されたとされる。
権力争いが渦巻く
肉親とても敵であった混乱の時代に
和歌をこよなく愛した若者
この歌を詠む時に
彼の心に去来したものは何だろうかとずっと考えてきた。
理不尽な力にあらがえず
運命の嵐の中に弱々しく漂流しながらも
強くあろうと前を向いて断崖に立つ
彼の姿がみえる気がして
ずっとこの歌が私の心にい続けている。
大学1年生の選択かなにかの授業でも、この歌についてを取り上げてまとめたことがあったが、あの時からその思いは全く変わっていない。